タヒチアンダンスとは?
ホテルで行われているショーとしても人気が高いタヒチアンダンスはタヒチの文化を象徴するものであり、今も昔もタヒチの人々にとってダンスのない暮らしは考えられないほど大切なものです。タヒチアンダンスはタヒチの伝統舞踊であり、フラダンスのルーツと言われています。
タヒチに出かけた際にタヒチアンダンスをさらに楽しめるよう、歴史や特徴についてご紹介しましょう。


タヒチアンダンスの歴史
タヒチアンダンスはもともと、豊穣や戦いの神であるオロへの信仰を示すためのものとして踊られていたほか、人生の節目を祝う祭りの場や遠来の客を歓迎する際のダンスでもありました。
しかし、その情熱的なダンスはタヒチの島々を訪れたキリスト教宣教師団によって1820年代頃に抑圧された歴史があります。そういった中でも密やかに守り続けられたダンスの復興運動が起こったのは、1950年代になってからです。
それから少しずつ復興を重ね、現代ではタヒチアンショーなどでも一般的に披露されるようになりました。
フラダンスはゆったりとした手の動作が中心
タヒチアンダンスと混合されがちなダンスとしてフラダンスが挙げられますが、フラダンスはそもそもタヒチアンダンスがルーツであると考えられています。
当時、「フラ(HULA)」とよばれるダンスは若い女性のみが踊るもので、争いのあった家族や部族間の和解をする際や、戦いに勝利した時、勇敢な人を讃える時などに踊られる重要な意味を持つものでした。タパと呼ばれる樹皮繊維の布をふんだんに使った衣装で踊る優雅なダンスで、ゆったりとした手の動作が中心なのが特徴です。


タヒチアンダンスはテンポが速い腰の動作が多め
フラダンスに比べると、タヒチアンダンスはテンポが速く、激しさを感じさせるのが特徴です。華やかなコスチュームに身を包んだダンサーが伝統打楽器に合わせて圧巻のダンスを披露する姿はとても印象に残ります。
フラダンスは手の動きが基本となっているのに対し、タヒチアンダンスは腰の動きがポイントです。タヒチアンダンスの種類や表現する内容によって衣裳が異なり、華やかなものから女性を美しく見せるもの、ゴージャスなものなど実に様々です。例えば、タヒチアンダンスの特徴ともいえるアンサンブルの衣装「ル・グラン・コスチューム」があります。これはタヒチ語ではアフ・オリと呼ばれ、ショーの最初や最後にダンサーたちが着ているものです。
タヒチの大きなお祭りであるヘイヴァでは自然素材で作られたものの着用が義務付けられていて、貝や羽の他、モレ(プーラウという木の樹皮で作った腰蓑)、タパ(樹皮繊維の布)、ニアウ(ヤシの葉)などを取り入れた豪華な衣装を身にまといます。
また、「ル・コスチューム・ヴェジェタル」と呼ばれる植物製の衣装も代表的です。こちらは素材としてアウティ(ティー・リーフという植物)が使われるほか、シダ、オプヒ(ジンジャー)、ティアレ・タヒチなどで装飾します。


代表的なタヒチアンダンスのオテア
タヒチアンダンスは大きく分けてオテア、アパリマ、パオア、ヒヴィナウの4種類があり、それぞれ特徴が異なります。
タヒチアンダンスの中でも代表といえるのがオテアで、次の3種類に分れます。
男女で踊る…オテア アムイ
男性だけで踊る…オテア タネ
女性だけで踊る…オテア ヴァヒネ
このダンスはトエレと呼ばれる伝統的な打楽器や太鼓類だけで演奏されるのが特徴で、打楽器の速いリズムに合わせながら男性は足、女性は腰を激しく動かしながら踊ります。打楽器のみのシンプルな音楽だからこそ、踊りが際立つといえるでしょう。
もともとは戦闘的ダンスとして戦闘時の士気を高めるために踊られていた軍事的な意味合いを持つダンスということもあり、男性の力強い踊りは見ものです。激しい情熱的な踊りの中で歴史を伝えるほか、勝利の喜びを伝えるため、歓迎の儀式のためなどに踊られています。
衣裳については、貝や羽の飾りがついた豪華なヘッドドレスのほか、ダンサーの腰に合わせてわさわさと揺れるモレというコスチュームで踊ります。また、植物性の衣装や、タヒチの伝統的な民族衣装であるパレオを着て踊ることもあります。
男性はマロと呼ばれるふんどしに似たスタイルで、葉っぱや樹皮などを用いたワイルドさを感じさせる衣裳が特徴です。


幅広い表現力で物語を踊るアパリマ
アパには「表現」、リマには「手」という意味があり、「アパリマ」という名前からも分かる通り手を用いて様々な表現をするダンスです。
はるか昔、まだポリネシアに文字文化がなかった頃にジェスチャーで語り部が航海の話を伝えたのがアパリマの始まりとされています。そのため、現在も物語を表現するための踊りとしてアパリマが踊られているのです。
打楽器の演奏だけで踊るオテアとは異なり、アパリマはほかの楽器や美しい歌に合わせて踊ります。ダンサーは素敵な音楽とともに優雅なダンスを披露するので、音楽と踊りの両方に注目してみましょう。
アパリマの中でも2種類のダンスがあります。
「アパリマ・ヴァヴァ」はウクレレや伝統打楽器の演奏に合わせ、ダンサーが座りながら踊るダンスです。手の動きで、ココナッツミルク絞りや釣りなどの昔ながらの暮らしを表現します。
「アパリマ・ヒメネ」は、ヴァヴァとは異なり歌が演奏に加わるもので、ギターやウクレレ、パフなどの演奏に合わせて手の動きで神話や自然などを表現するのが特徴です。
それぞれの踊りから何を表現しているのか想像してみてはいかがでしょうか。
女性はパンダナスという植物を用いた自然素材だけの衣装のほか、足首までの長さがあるパレオやロングドレスを着用することもあります。


掛け声が特徴のパオア
タヒチでは昔から樹皮でできた「タパ」と呼ばれる布をつくっていたのですが、パオアはこのタパ布をつくるジェスチャーが元になっているのではないかと考えられているダンスです。
日本ではなかなか見る機会のないダンスなので、本場のタヒチでぜひ楽しんでみてください。
ダンサーは男性リーダーと声の掛け合いをしながら手で太ももを叩いて踊るのが特徴です。
半円、または円になってダンサーたちが座り、ペアになった男女が掛け声で立ち上がって短いダンスを披露します。ここで披露されるダンスは基本的に即興の踊りです。ダンサーによって披露される踊りが異なるので、ずっと見ていても飽きることなく楽しめるでしょう。
パオアは、次にご紹介するヒヴィナウと2つセットのダンスです。パオアでは女性が男性を誘ってカップルになり、続くヒヴィナウという踊りでみんなで円になって祝福します。
Hiri ha aha haの掛け声と2つの円で踊るヒヴィナウ
男女がそれぞれ円を作り、音楽に合わせて逆方向に回りながら打楽器の演奏に合わせてワンフレーズずつ男女ペアで踊るダンスです。
ダンサーたちはリズムに合わせて男女別に2つの縁に並び、伝統楽器の演奏に合わせて中央の男性ソロリストがリズミカルに歌う間に、逆方向に回ります。2つの縁が向かい合って立ち止まったときに「アッヒリアッハァッハア」と答え、フォークダンスのように相手を変えながら踊りを続けていくのです。男女で異なる踊りを披露することもあるので、注目してみてください。

現地でタヒチアンダンスを見るには?
タヒチで本格的なタヒチアンダンスを楽しみたいと考えているのなら、代表的な方法は次の2つです。

タヒチアンダンスショーを見る
タヒチのリゾートホテルの中には、ディナーショーとしてタヒチアンダンスを披露しているところがあります。毎日開催されているわけではありませんが、タイミングが合えばこちらを楽しんでみましょう。中には宿泊客以外でも見られるものもあります。
本格的なダンスショーを楽しみたいのなら、毎年7月に開催されている「ヘイヴァ」と呼ばれるタヒチの大きなお祭りに足を運んでみるのもおすすめです。
ヘイヴァでは、代表的なタヒチアンダンスであるオテア、アパリマだけでなく、パオア、ヒヴィナウも含めた4種類をショーの中に取り入れるルールがあるので、これら4種類のタヒチアンダンスをすべて見てみたいと考えている方に向いています。
また、11月の最終週から12月の1週目にかけてタヒチアンダンスの大会である「フラタパイル」が開催されます。毎年新しいグループの参加も多数ありとてもにぎわうので、こちらもおすすめです。
本場でレッスンを受ける
見るだけでなく自分自身で踊りたいと考えている方は、観光客でも参加できるタヒチアンダンススクールで学ぶのがおすすめです。外国人を対象としている短期間のレッスンもあります。
アクティビティとしてタヒチアンダンスのレッスンを用意しているリゾートもあるので、滞在中に体験してみてはいかがでしょうか。
